五角関係が世界を滅ぼす!? 恋愛経験ゼロの私、エセ占い師になって恋愛を正す!

五角関係が世界を滅ぼす!? 恋愛経験ゼロの私、エセ占い師になって恋愛を正す!

last updateLast Updated : 2026-08-17
By:  皐桜ゆるりUpdated just now
Language: Japanese
goodnovel12goodnovel
Not enough ratings
120Chapters
441views
Read
Add to library

Share:  

Report
Overview
Catalog
SCAN CODE TO READ ON APP

 辺境伯令嬢ミシェルは前世の知識を使い、エセ占い師として恋愛相談を行っていた。世界を滅ぼした五角関係の真実を解明するためだ。  転生した世界は魔王の復活により殆ど人類が滅ぶ運命だった。  運命を変えるべく、ミシェルは前世の情報から侯爵令嬢アウレリアの死を回避しようと考えた。彼女の死は五人の人間関係に起因するようだ。 しかし、ミシェルはトラウマで幼い頃の記憶を無くし、引きこもっていたため人間関係がゼロだった。苦肉の策で占いを始めたのである。  そこへ第二王子ライオネルが訪れ、兄であるフィリップの恋愛関係調査を依頼してきて……。  ミシェルはライオネルと協力し、あの手この手で五人の恋愛を解明していく。

View More

Chapter 1

0話 二人で行こう

 私は死にたくなんかない。だから、早く逃げる準備をしなきゃ。自分の部屋で、鞄に詰められるだけ荷物を詰める。隣国に首を差し出せなんて冗談じゃない。

 ふと、赤い目をした彼の顔が頭に浮かんで手が止まった。

 そうすれば、次々とみんなの顔が脳裏をよぎる。アウレリア様の恋心が実った時の嬉しそうな顔、ケイティの純粋で信じてると言った時の顔。私の初めての友達たち。

 私が今逃げれば、彼女たちが手に入れた幸せは簡単に壊れてしまうだろう。この国だって滅んでしまう。逆に隣国ヴァレリアン帝国に私の首一つ出せばすべてが丸く収まる。

 そして、ゲームとは違った幸せな未来がこの国には訪れる。

 私だけが助けられる。本当に私は逃げてしまっていいの? わからない。どうしていいのか、わからない。

 逃げてしまいたい。誰かに、背を押してもらえたなら、私は楽に逃げられるのに。

「ミシェル!」

 低くてハリのある、でも優しくて暖かい声が私の名前を呼ぶ。

 振り返らなくても誰かなんてわかってる。

「二人で行こう」

 私はすぐさま振り返った。空は赤らんで、彼の綺麗な金髪はオレンジ色に輝いていた。それよりも目を惹きつけたのは空よりも赤くて深い瞳。口よりも雄弁に語っていた。大丈夫だって。

 その胸に飛び込みたかった。胸が目頭が熱くなる。

「二人で駆け落ちも悪くないだろう?」

 優しい声色で、私を誘惑する。彼から伸ばされた手をいますぐにでも取りたかった。

 遠くに二人で逃げれたら、そうしたら私は幸せになれるんじゃないかって。

 でも、私の手はドレスの裾を離さなかった。

 私には、貴方とみんなの思い出がある。前世の記憶を取り戻したあの日からの思い出が――。

Expand
Next Chapter
Download

Latest chapter

More Chapters
No Comments
120 Chapters
0話 二人で行こう
 私は死にたくなんかない。だから、早く逃げる準備をしなきゃ。自分の部屋で、鞄に詰められるだけ荷物を詰める。隣国に首を差し出せなんて冗談じゃない。 ふと、赤い目をした彼の顔が頭に浮かんで手が止まった。 そうすれば、次々とみんなの顔が脳裏をよぎる。アウレリア様の恋心が実った時の嬉しそうな顔、ケイティの純粋で信じてると言った時の顔。私の初めての友達たち。 私が今逃げれば、彼女たちが手に入れた幸せは簡単に壊れてしまうだろう。この国だって滅んでしまう。逆に隣国ヴァレリアン帝国に私の首一つ出せばすべてが丸く収まる。 そして、ゲームとは違った幸せな未来がこの国には訪れる。 私だけが助けられる。本当に私は逃げてしまっていいの? わからない。どうしていいのか、わからない。 逃げてしまいたい。誰かに、背を押してもらえたなら、私は楽に逃げられるのに。「ミシェル!」 低くてハリのある、でも優しくて暖かい声が私の名前を呼ぶ。 振り返らなくても誰かなんてわかってる。「二人で行こう」 私はすぐさま振り返った。空は赤らんで、彼の綺麗な金髪はオレンジ色に輝いていた。それよりも目を惹きつけたのは空よりも赤くて深い瞳。口よりも雄弁に語っていた。大丈夫だって。 その胸に飛び込みたかった。胸が目頭が熱くなる。「二人で駆け落ちも悪くないだろう?」 優しい声色で、私を誘惑する。彼から伸ばされた手をいますぐにでも取りたかった。 遠くに二人で逃げれたら、そうしたら私は幸せになれるんじゃないかって。 でも、私の手はドレスの裾を離さなかった。 私には、貴方とみんなの思い出がある。前世の記憶を取り戻したあの日からの思い出が――。
last updateLast Updated : 2026-06-30
Read more
1話 前世の記憶を取り戻したあの日
 飛び起きた。ベッドの上だった。よく思い出してみれば、ここが今日から通う学院の保健室だとわかる。 それよりも気になることがある。だって、まだ心臓がバクバクといっている。 倒れる前に見た女性を私は知っていた。サファイアの長い髪が靡き、瞳は日の光で虹色に光る彼女のことを私は、前世で知っていた。 彼女の名はアウレリア・ロセリウス。世界が滅びる原因になった侯爵令嬢だ。「はぁ……」 ため息しか出ない。頭が混乱する。今の情報を整理しなきゃ。 私はミシェル。辺境伯爵令嬢だ。そして前世の記憶を断片的に取り戻した。よし、前世の記憶も今世の記憶も両方ある。この世界の常識なんかを学びなおさなくていいのは良かった。それに、アウレリア侯爵令嬢がいるということはこの世界は前世のあたしがハマっていたRPGゲームの世界だ。知らない世界より数倍ありがたい。 でも、でも――「よりによってなんでゲームの始まる前なの……?」 あたしがアウレリア侯爵令嬢の映像を見たのは、ゲームのオープニング映像だ。アウレリア侯爵令嬢の死が原因で魔王が復活し、世界は混沌に包まれる。ゲームの主軸はその後で、少なくなった人間が世界を取り戻そうと仲間を集めて旅をするRPGゲームなんだよね。 この辺り一帯は魔王復活で確実に死の海、逃げるとしても生き延びた人がいたのは聖域の森だし、普段入ったら捕まる。よくて追放、悪くて打ち首ね。「詰んでるんだったら、前世の記憶取り戻さないで、このまま薄幸の美少女として死にたかった……」 視界に入る自分の髪を指でいじるとさらさらした。色素薄いのよね、今世の私。銀髪に淡い紫の瞳で、運動もしてないから細いし、引きこもってたから肌は白いし、なおかつ顔がいい。前世のあたしは日本人で黒髪黒目だったから、なんだか落ち着かないや。「はぁ……」 でも死にたくないな。前世での記憶は仕事明けの三連休に寝ないでゲーム三昧、クリアできた達成感に任せてピザと炭酸ジュースでお祝いしたところで途切れている。仕事して二年、これからって時の若い身空で死んだってわけ。 今世だってこれからだったのに。辺境から勇気を出して王都に来たのに、下手したらもうすぐ死ぬってことでしょ? でも、生きることを諦めたくはない。 ガラっ 体が跳ねて思わず音がした方を見た。扉を開けたのは栗色のふんわりとした髪を緩く編み込み、
last updateLast Updated : 2026-06-30
Read more
2話 平民ケイティ
「ケイティ……」「あ、気が付いたんですね! よかったぁ」 彼女はにこにこして駆け寄ってきた。思わず名前を呟いたけど、聞こえてなかったみたいで良かった。知人でもないのに名前を知ってたら変だもの。 ケイティは追加DLCのサブストーリーに出てくる平民。ある人が語る昔話に出てくるのを覚えている。アウレリア様が死ぬ原因、五角関係の登場人物のひとり。「目の前で倒れたからびっくりしちゃって!」「貴女が運んでくださったの?」「はい、これでも力はある方なんです!」 腕を曲げて力拳を作り、そこを軽く叩いてアピールしてくる。私よりも少し背が高いくらいなのに、身体は私よりしっかりしている。だからって、そんな力持ちだったかしら? 愛嬌がある彼女は、よくある乙女ゲームのヒロインのようなもののはず。それなのに、そんな特殊な設定あったかしら?「え、えっとぉ。私、パン屋の娘で重いものは日常でも運んでるので……!」 返答しないでいると慌てたように捲し立ててくる。目が泳いでるし、これは確実にクロね。誰か別の人に頼まれたってところかしら。でも、隠すってことは知られたくないんだろうし、無理に聞き出す必要もないわよね。「そう、ありがとう。お礼を言うわ。私はミシェル・シルヴァーンよ」「私、ケイティって言います」「ケイティ、お礼をしたいから放課後私の屋敷にいらして」 サブストーリーの重要人物、もっと話せばいろいろと思いだせるかもしれない。お礼にかこつけて、家に誘えば断りづらいはず。「いえいえいえいえ、それには及びません! 私は入学式が終わったことを伝えに来ただけなので、ほら、お店の手伝いもしなきゃいけないしっ!」 全力で断ってくるじゃない。まあ、そうよね。誰かに頼まれただけっぽいし、知りもしない伯爵令嬢の屋敷に平民がほいほい来るわけないよね。まだ時期じゃないということ、諦めるしかなさそうね。「残念だわ。でも、入学式が終わったことを教えてくれてありがとう……」 入学式は終わってしまったのね。出れなかったということはとても痛い。ずっと辺境に居たから知り合いもいないのに、入学式でも顔出ししてないとなると……クラスで馴染めるかしら? ぼっちだと情報収集ができなくて詰んでしまいかねない。 視線を落とした隙に、ケイティの手が私に近づいた。なに? と思ってる間に優しい手つきで胸元に白いガ
last updateLast Updated : 2026-06-30
Read more
3話 宰相の孫ノクタリウス
「シルヴァレーン嬢、お加減はいかがですか?」 女性よりはいくぶん低い声。男性であろう声の主は扉を開けて中に入ってくることはしない。思わぬ第三者の登場に私は平常心を取り戻した。誰だが知らないけど、ちょうどよかった。「お気遣い痛み入ります。どうぞお入りになって」 私が入る許可を出すと、ドアを開けて男性が一人入って来た。学生服からして、生徒の一人だということがわかる。漆黒の髪はあたしが見慣れているものよりも艶があって綺麗だ。メガネの奥の黒い瞳を眇めており、ケイティへの嫌悪感が滲み出ている。 彼もまた重要人物のひとり――宰相の孫ノクタリウスだ。 彼の残した書記をゲーム内で読んだ記憶がある。たしか侯爵令嬢アウレリア様の幼馴染でアウレリア様が好きだったはず。アウレリア様も彼を愛していたと記されていたけど、その真偽は定かではない。サブストーリーと若干の矛盾があるもの。他には、第一王子フィリップ殿下の思い人が平民だっていう嘆きが書かれていた。この話で出てくる平民はケイティしかいなかったはずだから、フリップ殿下がケイティを好きだった可能性がある。「……君は平民だろう? シルヴァレーン伯爵令嬢に近すぎるのではないか?」「あ、すみません……!」「シルヴァレーン嬢の知人なのか?」「いえ、倒れた時に傍に居たので心配になって様子を見に来たんです」 ケイティは高圧的なノクタリウス様に負けずににこっと笑う。彼女の気にしてない雰囲気にノクタリウス様の方が面を食らって狼狽している。しかし、ノクタリウス様もスタンスは崩さないつもりらしく、さらにケイティに厳しく言葉を投げる。「それであれば用事も終わったのだろう? 早く帰るべきでは?」「ですが、この状態のシルヴァレーン様を残していくことはできません」「僕が来た理由がわからないのか? シルヴァレーン嬢の迎えの者が来たから呼びに来たのだ」「……! よかった!」 ノクタリウス様が重ねた嫌みはまったくケイティには伝わらないようで、私の迎えが来て喜ぶ始末。強いわね、この子。「と、とにかくわかったなら君は帰りたまえ」「はい! シルヴァーン様もお大事になさってください!」 ケイティは笑顔で私とノクタリウス様に頭を下げて、部屋を出て行ってしまった。ああ、貴重な情報源が……次の約束が取れてないのにっ。「どうなさいましたか?」「いえ、
last updateLast Updated : 2026-06-30
Read more
4話 恋愛相談もいいかもしれない
「シルヴァレーン嬢、従者がお迎えに来てます。歩けますか?」 「はい、大丈夫です」  私は横たわっていたベッドから降りて鞄を持ち、彼がエスコートしてくれる扉を抜けた。 「自己紹介が遅れました。僕はノクタリウス・グレイヴァンドです。生徒会の副会長をしてますので、何か不都合なことがあれば頼っていただければと思います」  ケイティに対応するのとは態度は真逆ね。でも、いくら微笑みを浮かべながら優しく話しても、事務的な内容。これは暗に倒れてんじゃねぇよって言われてるのかしら。貴族特有の遠回しな嫌みになっただけね。 「ありがとうございます。体調には気を付けて過ごしますわ」 「ええ、お父様お母様にはよろしくお伝えください」  あ、違うわ。これお母様狙いだわ。お母様は王族直属の占い師で有名なのよね。本物の占い師が使う力って、魔法の一種で才能がないと使えないの。予知魔法ってとこかしら。仲良くしておけば視てもらえると思ってるのかもしれないわね。 「はい、よくしていただいたとお伝えしておきます」  一応社交辞令として、お礼の贈り物と手紙くらいは出さないといけないしね。 「シルヴァレーン嬢のお母さまは、学園でも占い師をしていたとか」 「ええ、恋愛相談をよく受けていたと聞いています」  お母様もこの学校の卒業生なのよね。たしか趣味で恋愛相談を受けていて、部活として活動してたとか。だから、その部活で使ってた占いの館が、いまもまだ学内にあるのよね。 「シルヴァレーン嬢は部活は何を考えておられますか?」  ああ、はい。私に占い部をやらないのかって聞きたいのね。しかも、興味があると。  ちょっと、待って。これはチャンスでは? 重要人物が興味を持っているうえに、恋愛相談を上手くこなしていけば、痴情のもつれ解消できちゃったりするのでは? 女性はもれなく占い大好きだしね。  残念なことに占い師としての力は継承していないけど、やりようによっては出来る気がする。 「お母様に相談してみますわ」  決定事項ではないが、検討しているという旨を伝えた。楽しみにしているという返答に、私は微笑むに留めて、ただ静かに彼について歩いた。従者が見えたため、彼もそれ以上話はせずに学院の前の馬車までエスコートしてくれた。
last updateLast Updated : 2026-06-30
Read more
5話 占いの館始めました
 学院の端に位置する部室の一室。ここは占い部が管理する占いの館。占いの名に相応しく、上からいくつものカーテンが垂れ下がり、暗めの照明だ。中央にはテーブルと椅子が向かい合わせに二脚。片方に私が座り、反対側に相談者が座る形だ。 前世の記憶を取り戻してから、私はお母様が学生時代にしていた占い部を引き継ぐ形で占い師をしている。 今世のお母様は占い師。恋愛関係=占いなんて単純な構図だけど、情報収集するにはもってこいなわけで、お母様に学生時代使ってた占いの館を引き継がせてもらったの。引きこもりで初めて学院に通う私には知り合いなんていなかったしね。 今日も、目の前に座る相談者にそれっぽく応える。「大丈夫です。彼女にとっては今とてもつらい状況だとは思いますが、困難を乗り越えた先にこそ幸せはあるものです。二人の距離が近づくチャンス、貴女は見守って上手くいった後に心配していたことをお話すればいいのですわ」「わかりましたわ。わたくし、あの子が乗り越えるまで見守って支えますわ……!」 相談者は立ち上がってお辞儀をし、カーテンを手で開いてから元気よく外へと出て行った。部活扱いなので金銭は発生しない。「ふう、上手くいくといいんだけど……いままでの傾向的に問題ないはず」 占いの館と称しているけど、実は私は占いをしていない。正確にはできないのだ。 残念ながら私は、お母様の占いという魔法の力を引き継いではいないのよね。お母様の魔法は、王族直属の魔法で、前世風に言うなら予知魔法ってとこかしら。 魔法は使えなくても、占いに訪れる人の話は前世で見た小説や漫画みたいな状況ばかりで、だったら定番はこういう行動じゃない? という返答をすると、それが不思議なことにしっかり当て嵌るのだ。あくまでゲームの世界ということなのかしら。 そんなこんなで”当たる占い”としてひっそりと女子の間では噂になっている。 カーテンが開き、大きめな影が館内に入ってくる。今日、三人目のお客様ね。時間的にこの人で終わりにしようかしら。 テーブルの前に座っている私にツカツカと客が歩み寄ってくる。「占いの館へようこそ」 私は定番の文句を述べた。 目の前まで客が来ると、その風貌が明らかになる。暗い中でもかすかな光を拾い上げて光る金髪に、燃えるような赤い瞳。きりっとした眉は意思の強さが伺えた。服装は普通の学生服を着
last updateLast Updated : 2026-06-30
Read more
6話 イレギュラー人物は第二王子
 何故ここに第二王子が? ことりと喉が鳴ってしまった。 でも、私は平静を装わなければならない。私はこれでも占い師を名乗っているのだ、お客様が自分から素性を名乗らない限り、そこに触れてはいけない。「今日は、何を占いにいらしたのですか?」「シルヴァーン辺境伯の娘、ミシェル・シルヴァーンだな?」 ちょっと、いきなり人の詮索を始めるんじゃないっ! 思わず突っ込みそうになっちゃったじゃない。布で顔を隠しててよかった。絶対顔に出てたわ、今の。 私は目を細めて第二王子ライオネル殿下を見る。 彼の表情は真剣そのものというか眉根が寄ってるので訝し気な表情だ。こちらを怪しんでいるのだろうか。視線が妙に合わない。私の視線よりも少し上を彼の目は見ているように感じる。 彼の顔をじっと見ても、前世でのゲームの記憶にはかすりもしなかった。五角関係に出てくる第一王子のフィリップ殿下の弟だから、出てこないはずはないのだけど。もしかしたらほんのちょっとしか出てこないのかもしれないし、モブだとしたらシルエットで出てきていた可能性もある。 ゲーム情報もない、今世での記憶でも会ったことがない人物に、私はどう接すればいいだろうか。「……私は占い師です」 暗に素性は言いたくないと、言葉で返す。一線を引く私に、第二王子はさらに顔を歪めた。「ミシェル・シルヴァーンで部活の許可を取っただろう」 怒気とは違う、厳格で厳しい口調に私は肩が上がった。 わかっているならわざわざ問いかけてこないでよね。いけない、責められているようでイラついちゃう。落ち着かないと。「……ミシェル・シルヴァーンですが、何か?」 私は顔にかけている布と、フードを外して自分がミシェル・シルヴァーンだということを示した。 ミシェル・シルヴァーンだったら何か問題があるというの? 元々この占いの館はお母様のものだし、それを使わせてもらっているだけ。部活だって第二王子が言ったように私はしっかりと申請を出して通している。活動にも相手の悩みに答えているだけでなんら違法なことなどしていない。怒られるようなことなんて何もない。 第二王子は私の顔を確認するように目を眇め、しばらく黙った。何を考えているのかはわからない。「……貴様、よく占いが当たるそうだな」「……ええ、ご贔屓にしていただいております」 慎重に言葉を選ぶ。よく当た
last updateLast Updated : 2026-07-01
Read more
7話 不安的中占いの失態
「……言っている意味がわかりかねます」  絞り出した声は完全に震えていた。声も低さを保てずにいつもと同じ声色になってしまう。取り繕うことができなかったことに歯噛みする。 「お前の母親は王族直属の占い師だぞ? 娘に才能がないとよく嘆いていたのを直接耳にしている」  なんでこの人、ずっと威圧してくるんだろう。私の中で不安と怒りが入り混じって、言い返したくなってしまった。 「占い師の才能がないからと言って、占いをしてはいけないという法律はなかったように思いますが?」  そんな法律があれば、おまじないとかも出来ないし、普通に稼業にしてる人も辞めなきゃいけなくなっちゃう。  だから、私も強い口調で言い返してしまった。 「……問題はそこじゃない」  第二王子は一瞬驚いたように身を引いた。けど、すぐに顔を引き締めて身を乗り出し、バンっとテーブルの上に何かを叩きつけた。  テーブルに叩きつけられたのは何枚かの書類だ。国の刻印が見えるということは、これは重要な書類のはずだ。 「占い師の才能のない貴様が、なぜ国家秘密事項がしまってある鍵の番号まで知っている?」 「…………」  しまった、心当たりがある。二週間前の相談だ。宮廷勤めの兄が大事な書類を鍵のついたロッカーに入れたまま番号を忘れてしまったからどうしたらいいかという内容で、その勤務場所がゲームの魔王城つまりは現在の王城になるんだけど、ゲームで開ける宝箱の場所と一致したのよね。謎解き形式で印象に残ってたから、番号を助言しちゃったアレだ。  少し考えればそれが本当のことかどうかなんてわからないのだから、答えてはいけなかった。もしかしたら悪いヤツが書類を盗もうとしたかもしれないのに。  でもあの時は占いが当たるって評判になって一番調子に乗ってた時で、万能感でついそのまま答えちゃったのよ……。  サッと頭から血の気が引くのがわかる。 「先ほどやっていた占い方法から見ても、王族直属の占い師エヴァリーナ・シルヴァレーンとやり方がまったく違う。占いの力が開花したわけではないのは明白だ。貴様はどうやって鍵の番号がわかったんだ?」  ちょ、前
last updateLast Updated : 2026-07-01
Read more
8話 印象は最悪
「重要な書類を持ってくるわけないだろう。試したんだ」  第二王子は私が勧めるまでもなく目の前の椅子に座った。そして、肩をすくめて両手をあげながらやれやれと言った風に息を吐く。そんな目の前の相手に、殺意が芽生えても仕方がないだろう。  テーブルの上で握った手がふるふると震える。  私がどれだけ不安になってどれだけ心に負担があったと思うの? それを試した? 何のために? 理不尽な内容だったら、許さない。 「何故ですか?」 「まず第一にお前に魔法の力が開花しているのであれば王族直属の交渉をしようと思っていた。第二に、魔法の力でなくとも当てられる占いなのであれば、今後のことに協力を仰ごうと思っていた」 「それであれば普通に協力を仰いでください。印象最悪です」  思ったことがもう口からついて出る。けど、第二王子が気にした様子はなく眉を上げて笑った。笑うとこじゃないからっ。 「ずいぶんはっきりと物を言う。それでこそ協力を仰ぎたいと思ったわけだが」  イヤだという気持ちを込めてねめつけると、目の前の相手は口端をあげたまま椅子の腕に肘を置いて小ばかにしたように首を傾げ、足を組む。 「試したのは悪かった。だが、俺も第二王子という立場上、ただ言うことを聞くだけの人物はいくらでもいる。だが、俺が欲しい協力者は、俺に対して引け目を感じない人物が良かった。それに分析し、困難を打破しようとする力は、より収穫がある」 「お断りします」  お願いされる前にぴしゃりと言い放った。それが人に謝る態度か。だいたい、人を試すようなヤツと協力関係になりたくなんてない。  しかし、断られても第二王子は表情を崩さない。胸元に手を入れて何かを取り出す。 「そうか? きっとお前にも理がある話だと思ったんだが」  第二王子が取り出したノートには見覚えがあった。鍵をつけた引き出しに入れっぱなしにしていたノートによく似ている。 「お前、随分と王家や侯爵家関係の噂が好きなようだな?」  あのノートは私が前世の記憶と噂を元に、五人の関係性を書いたノートだ。もう! もうもう! なんなのこいつ!! 人のプライベートまで勝手に漁って最悪!! 好きなんじゃなく
last updateLast Updated : 2026-07-01
Read more
9話 情報まとめ
 自分の寝室の鏡台の前で、私は改めて五角関係をまとめたノートを広げた。今日、ライオネル殿下にバレていたノートだ。透視の魔法を使ってまでコピーするなんてプライバシーの侵害だ。  五角関係を繰り広げる人間をピックアップした関係図のページを開く。  侯爵令嬢アウレリア、第一王子フィリップ、宰相の孫ノクタリウス、平民ケイティ、騎士ラルフ。の五人についてだ。ゲームの内容を思い出して綴った恋愛の矢印が書いてある。  騎士→平民→王子→←侯爵令嬢←宰相の孫。  騎士は平民と仲が良く、平民は優しくしてくれた王子が好き、王子は元婚約者の侯爵令嬢を思い、侯爵令嬢は王子が死んで自殺するほど愛が重い、宰相の孫も本人の書記に残っている大半が侯爵令嬢に対する愛についてだった。  次のページをめくる。取り戻した記憶に関するメモだ。  世界の破滅の流れはこうだ。第一王子フィリップ殿下が戦死、騎士ラルフも一緒に戦っていた平民ケイティを庇って戦死、ヴァレリアン帝国に嫁ぐことになっていたアウレリア侯爵令嬢は、愛する人が戦死したことを嘆き悲しみ自殺した。宰相の孫ノクタリウスはアウレリアの死亡を嘆き悲しみ、帝国に宣戦布告。帝国は宣戦布告と約束を破られたことを理由に攻めて来て、国が壊滅。封印されていた魔王が復活して世界は混沌に呑まれる。 「破滅した世界では聖域に逃げ込んだ人間が生き残って、後々勇者が世界を救うのよね」  メモを読みながら、内容をまとめる。  魔王を復活させないためには、カイリス王国を守らないといけない。今ある情報の中では、ヴァレリアン帝国に攻め込ませる理由を作らないのが一番だ。カイリス王国とヴァレリアン帝国の関係は、侯爵令嬢アウレリア様との婚約で成り立ってる。攻め込まれる一番の理由はその婚約による不祥事に他ならない。 「それを阻止できればいい」  一番の要は侯爵令嬢であるアウレリア様だ。彼女は愛する人を失い自殺している。アウレリア様が思い人と結ばれれば死ぬことはないのだろうけど、でもそうなると隣国ヴァレリアン帝国との婚約破棄になるだろうから、攻め入る口実になってしまうのかしら。  アウレリア様が失恋して、その心が癒えればそれが一番解決しそうだけど……。 「失恋
last updateLast Updated : 2026-07-01
Read more
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status